令和2年第3回 県議会定例会にて一般質問を行いました。(1)

令和2年12月7日、県議会定例会にて行った一般質問の内容と答弁要旨を掲載致します。

1 県政における喫緊の課題について

(1) コロナ禍における対策について

ア 新型コロナウイルス感染症対応病床の確保について
≪質問≫

神奈川県では、医療崩壊を防ぐための医療提供体制「神奈川モデル」を整備し、これまで新型コロナウイルス対策に取り組んできたと承知しています。
11月以降の感染拡大で、本県でも新規感染者が200人を超える日も多くなるなか、県は11月14日に医療アラートを発出し、医療機関に病床確保を求めたと承知しています。

感染状況をとらえるモニタリング指標には病床のひっ迫具合というものがありますが、県が確保している新型コロナ感染者向けの病床、いわゆる確保病床、最大1939床に対して、12月2日時点で発表された12月日1日の速報値によれば、重症病床200床に入院60人の利用率30.0%、中等症1739床に入院392人の利用率22.54%と公表されていますが、確保病床ではなく実際の受け入れ可能な即応病床の数を元に利用率を算定すると、重症病床88床に入院60人の利用率68.2%、中等症685床に入院392人の利用率57.2%となり、現実には危機的と言わざるをえない状況であると感じております。
11月14日の知事が発出した医療アラートは、2週間で650床から1100床を目標とし、医療機関に対して更なる病床拡大を要請しましたが、2週間たった現在も100床ほどしか増えていないと聞いています。
感染拡大のスピードに、病床の確保が追い付いておらず、今後、ステージが進んでいった際、確保病床1939床を整えることができないのではないかと強く危惧しています。

そこで、知事に伺います。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大が止まらない場合、確保病床1939床を速やかに確保できるのか、また、法的な制限があるのは承知していますが、現在の状況を鑑みれば、臨時医療施設をさらに開設させることも視野に入れるべきと考えますが、知事の所見を伺います。

≪知事答弁≫

市川議員の御質問に順次お答えします。県政における喫緊の課題について何点かお尋ねがありました。まず、コロナ禍における対策についてです。はじめに、新型コロナウイルス感染症対応病床の確保についてです。
県では、医療提供体制「神奈川モデル」を構築し、新型コロナの感染拡大による医療崩壊を防いできましたが、現在の感染拡大の局面において、医療提供体制の厳しい状況は続いています。今後、感染が拡大し、確保病床数1939床の全てを新型コロナ患者の入院に対応できるように拡大する場合は、通常医療を制限しなければならず、すぐに対応することは難しいと考えています。そこで、県は「65歳以上の軽症者・無症状者を全員入院させる必要はないのではないか。」との、医療現場の声を踏まえ、65歳以上や基礎疾患のある方全てを一律に入院させるのではなく、重症度やリスクを勘案した基準を設定し、医師が入院の必要性を判断することとしました。具体的には、65歳以上は2点、75歳以上は3点、透析患者は6点、高血圧は2点といったように、患者のリスク因子を重みづけし、5点以上の方を入院の目安としています。この取組により、これまで新型コロナで入院対象としていた方の半数程度が、自宅等での療養となりますので、入院が必要な患者に病床が振り分けられ、実質的な病床の確保につながります。
次に、新型インフルエンザ等対策特別措置法に 基づく臨時医療施設については、緊急事態宣言が発令された地域の都道府県知事が設置できるものであり、現在、新たな設置はできません。なお、本県においては、すでに臨時の医療施設を5月に開設しており、全体で5棟180床を整備していますが、未だ3棟しか使用していないため、新たに臨時医療施設を開設する必要はないと考えています。
仮に、患者が更に急増し、緊急事態宣言が発令される状況となれば、設置の可否についての検討が必要となりますが、医師・看護師等の確保が課題となりますので、感染状況を見極めながら慎重に判断します。
県では、医療提供体制「神奈川モデル」を維持できるよう病床を確保するとともに、県民の皆様が必要な医療を安心して受けられるよう、しっかりと取り組んでまいります。

≪再質問≫

ご答弁ありがとうございました。
それでは、1点再質問をさせていただきます。
「新型コロナウイルス感染症対応病床の確保について」です。
実質的な病床の確保のために、入院基準の見直しを図ったということですが、こういった基準は他県では取り入れられておらず、入院の対象とならなかった65歳以上の方や基礎疾患のある方に万が一のことが起きれば、大きな問題となる、非常に大胆な見直しだと考えます。県は、この入院基準について、きちんと安全を担保していると言えるのか伺います。

≪知事答弁≫

今回の入院基準の検討にあたっては、これまでの県内の入院患者の症状等を分析したうえで、リスク因子を数値化しましたが、入院の要否をスコアに基づいて機械的に判断するのではなく、最終的に医師が総合判断することとしています。
また、判断の結果、入院の対象とならず、宿泊施設や自宅で療養される方には、毎日、電話やLINEで、健康観察を行っています。体調が悪化した時には、看護師が24時間体制で電話相談を受けつけ、状況により医師が状態を確認して、オンライン診療や薬の処方、さらには緊急搬送も可能な体制を整えています。併せて、これまで以上に療養者の健康観察をしっかり行うため、高齢者や基礎疾患がある方には、呼吸不全の状態が確認できるパルスオキシメーターを貸し出すこととしました。そもそもこのアイデアというものは、現場の医師の声に基づいて作ったものであり、私が色々なところでお話をしても、現場の医師からは大変評価を受けている現状があります。

≪要望≫

病床確保についてです
私の地元川崎市でも、今日から時短要請が始まりました。医療と経済の両立、二律背反のテーマ、本当に難しい局面であり、正解は時間を経なければわかりません。批判覚悟での決断が求められる時と感じております。しかし、一方で、ワクチン開発なども進み、出口もようやく見えてきました。
私は、少なくとも今から数週間は医療に対して大きな危機感を持つべきフェーズだと思います。ご答弁で、事実上、早期の1939床の確保は難しいという認識が示されましたが、この1939床という確保できない「確保病床」の数字が、本県の本当は逼迫している医療現場の実態を県民に見えなくしている状況です。東京や大阪に比べまだ大丈夫というような県民へのミスリードを私は懸念しています。臨時施設は最後の手段としても、想定外を想定して、あらゆる手を打っていかねばなりません。年末年始は医療機関も休診になる時期であり、救急医療などへの影響も懸念されます。また、ベッドを準備しても、一番確保が必要なのは医療スタッフであることは言うまでもありません。現在献身的にコロナの医療に携わっておられる医療機関にさらなる支援はもとより、広域的な協力や現在職につかれていない医療関係者にボランティアを募るなど、あらゆる手法を検討されておくことを要望します。
さらに、今日から始まる入院基準の見直しについては、知事からご答弁はいただいたものの、ご心配の声もあります。とにかく命を守ることを第一に、不安払しょくのため具体的な対応の内容を県民に知らせるとともに、療養中のモニタリングをしっかり対応していただきたいと強く要望します。
また、昼夜わかたずがんばっている担当県職員の方々も疲弊されています。応援体制もよろしくお願いいたします。

イ コロナ禍におけるメンタルヘルスケアとしてのうつ病対策について
≪質問≫

現在、新型コロナウイルス感染症については、第3波が到来したと言われ、全国的に感染が広がっており、多くの人が健康被害や、経済的困窮等、出口の見えない不安を抱いている状況にあります。
また、テレワークやオンライン授業等の増加、行事の中止により、人とのコミュニケーションが取りづらい状況も続き、多くの県民がストレスをかかえる中で生活しているのが実情と実感します。
また、「コロナうつ」という言葉にもあるとおり、このような我慢やストレスがたまることにより、心の病を抱えてしまう人も多く、うつ病等の体調悪化から自殺に繋がってしまうなど、コロナ禍でのメンタルヘルス面への影響が大変危惧されるところであります。

11月24日厚生労働省が先月の自殺者の年代別の情報を公表し、特に女性の20代と40代が前年同月と比べ2倍以上に増えていることがわかりました。非常に憂慮すべき状況と思います。

すでに本県ではこころのライン相談など相談体制を強化し、実績をあげているのは承知し、評価するところですが、自殺者の原因・動機には、「健康問題」の割合が高く、その中でもうつ病を含む精神疾患が原因となっていることが多いため、メンタルヘルスケアとして、相談だけではなく、うつ病対策に焦点を合わせて、取り組んでいかなければいけない段階ではないかと考えます。

うつ病は、特別な病気ではなく、ストレスなどにより誰でもなる可能性がある病でありますが、心療内科への受診は心理的にハードルが高いのも事実であり、まずは県民がうつ病について正しく理解していただく必要があります。

また、現在、新型コロナウイルスの感染を恐れ、医療機関への受診を控える動きもありますが、心に悩みを抱えた方に対する相談対応だけでなく、うつ病にかかってしまった方を、周囲の目を気にせず受診できるオンライン診療も含め、適切に医療機関へつなげていくことも重要です。

そこで、知事に伺います。
コロナ禍において、県として、今後、うつ病対策について、どのように取り組んでいくのか、所見を伺います。

≪知事答弁≫

次に、コロナ禍におけるメンタルヘルスケアについてのうつ病対策についてです。
現在、コロナ禍で、多くの方がストレスを抱えていますが、心やからだのストレス等、様々な要因が重なると、うつ病につながる可能性があります。
うつ病は、誰でもなる可能性があり、適切な治療を受けることにより回復することが可能です。しかし、ご自分やご家族の心や身体の不調の原因がうつ病にあると気づかないことが多いため、県民の皆様に、うつ病について正しく理解していただき、適切な治療につなげていくことが重要です。
県では、これまでセミナーやイベント等で、うつ病の普及啓発に取り組むほか、こころの健康相談を行ってきました。
また、うつ病の患者は、不眠など、身体の不調から、内科医等のかかりつけ医を受診することが多いため、内科医等を対象とした「うつ病対応力向上研修」などを実施してきました。
一方、未だ、専門の診療機関での受診につながっていない方も多く、新型コロナの影響で受診を控える傾向もあるため、速やかなうつ病の治療につながるよう、さらなる取組が必要です。
そこで、今後は、うつ病に関する理解を一層深めていただくよう、うつ病のセルフチェックシートなどを県のホームページに掲載するとともに、かかりつけ医と連携して周知するなど、取組を強化していきます。
また、新型コロナの状況下で治療が受けやすくなるよう、うつ病等のオンライン診療を行う医療機関を、新型コロナ対策パーソナルサポートを活用して周知していきます。
県では、今後、うつ病の早期発見、早期治療に向け取組を一層強化し、コロナ禍におけるうつ病対策に、しっかりと取り組んでまいります。

(2) ヘイトクライム等につながるSNS上の誹謗中傷に対する取組について

≪質問≫

総務省の令和元年の調査結果では、本県のインターネット利用率は92.7%であり、そのうち、68.7%がスマートフォンによるインターネット利用であることからも、誰もが気軽にスマートフォンでSNSを楽しんでいる状況であると認識しています。

その一方で、最近は、このSNS上における他人への誹謗中傷が大きな人権問題となっており、書き込みが一度なされると、瞬時に広がってしまい、それをきっかけに、最悪の場合、脅迫といった犯罪や自死へ追い込むといったケースに発展してしまう事案も発生しています。

障がい者への歪んだ偏見や差別意識が起因となった未曽有のヘイトクライムともいわれる津久井やまゆり園での殺傷事件や脅迫事件も起きてしまった川崎でのヘイトスピーチデモといった人権に関わる大きな問題が発生している本県だからこそ、ヘイトクライムや人を自死へと追い込むような悪質なSNS上における誹謗中傷には、知事が先頭となり毅然とした姿勢で対策を講じるべきと考えます。

しかしながら、インターネット上での誹謗中傷に対しての対策の実情に目を向けると、既にヘイトスピーチに関する条例を制定している川崎市における運用状況を見ていても、書き込みの削除要請に至るまでも相当の時間を要する上に、要請以上の行為はできないことなど、実効性の面から、なかなか難しい状況にあるのも事実です。

特に今年は、新型コロナウイルス感染症による患者や医療従事者、さらに周辺の方々に対するインターネットによる偏見や差別も起きており、行き過ぎた正義感が脅迫のような法に抵触する行為に発展しないか危惧するところであります。

インターネット上の書き込みにより尊厳を傷つけられるといった被害だけでなく、ヘイトクライムにつながるような行為の発生に対しては、法的整備だけでなく、SNS事業者の自主的対応といった協力が必要不可欠ではないかと考えます。

そこで、知事に伺います。
ヘイトクライム等につながるSNS上の誹謗中傷に対して、県として、SNS事業者への対応を含め、実効性ある取組を進めていくべきと考えますが、ご所見を伺います。

≪知事答弁≫

次に、ヘイトクライム等につながるSNS上の誹謗中傷に対する取組についてです。
インターネットの普及により、コミュニケーションの輪が飛躍的に広がる一方、SNS上での他人への誹謗中傷や差別的書き込みなど、人権やプライバシーの侵害につながる情報の拡散が社会問題化しています。
県では、これまで、子ども、障がい者、外国籍県民といった様々な分野における人権課題の解消に向け、取り組んできましたが、昨今のインターネットでの誹謗中傷といった問題についても、大変深刻な人権課題と受け止めています。
そこで、ルールやモラルを守ったインターネットの正しい使い方や、被害に遭った場合の対応方法をホームページ等で周知・啓発しているほか、ヘイトスピーチ等に関しては、差別的な書き込みをチェックするモニタリングの実施や、弁護士相談窓口を開設しています。
今後は、このヘイトスピーチ相談だけでなく、インターネットによる誹謗中傷でお悩みの方を対象にした弁護士相談を、今年度中に追加実施する予定です。
さらに、県民が加害者や被害者にならないよう、SNSの適切な利用を普及啓発するため、SNSの事業者団体や関係機関で構成する連絡会において、子どもや大人、学生といった対象に応じた効果的な手法を検討し、順次、着手します。
また、この連絡会の場では、インターネットの誹謗中傷対策について広く意見交換を行いながら、利用規約に違反する投稿の削除等、事業者の自主的取組が一層促進されるように、事業者団体に働きかけを行うなど、取り組んでまいります。
県では、引き続き、インターネットの誹謗中傷対策について、関係機関と連携して、実効性ある取組を進めてまいります。
私からの答弁は以上です。

≪要望≫

これについては、知事が先頭に立って事業者へのご協力いただくことをお願いしていただきますよう要望させていただきます。

(3) 少年非行の情勢とその対応について

≪質問≫

平成27年2月、私の地元である川崎市において、当時中学1年生の生徒が多摩川の河川敷において複数の少年により殺害されるという大変痛ましい事件が発生しました。川崎に生まれ育った私にとり、このような少年犯罪は二度と繰り返してはならない事件であり、少年を犯罪者にも被害者にもしてはならないというのは私の議員としての使命でもあると考えています。

その後の県警察や関係機関・団体による取組の成果もあり、川崎市におけるここ数年の少年非行の情勢を見ると、検挙・補導された非行少年は減少し続けています。しかしながら、私が地元を歩いてみても、体感としては少年犯罪の芽は新たな形を変えながら顕在しており、実際、報道等においては、特殊詐欺に加担したとして検挙される少年が多いことや、薬物事犯で検挙される少年が多いと聞いており、少年非行情勢は、依然として予断を許さない状況にあると言えると考えます。

私たち大人が次代を担う子どもたちの健やかな成長を図らなければならない立場にあることをかんがみれば、私たちは、日々変化する様々な社会的要因が子どもたちの心とその成長に大きく影響を及ぼすものであることを十分に認識した上で、その健やかな成長のため、良好な社会環境の整備に配慮する必要があるのではないでしょうか。

私の選挙区、川崎市幸区には、少年相談・保護センターという警察の相談機関があります。この少年相談・保護センターは、まさに子どもの特性等に応じ、子どもたちの様々な問題への相談に応じてくれるものであり、子どもたちの健やかな成長が図られるようにするための有益な社会資源の1つであると思います。

そこで、警察本部長に伺います。
県内における非行少年の検挙・補導状況の推移とその特徴について、また、少年が犯罪に加担しない取組としてどのような活動を行っているのか。さらに、少年相談・保護センターはどのように取り組んでいるのか伺います。

≪警察本部長答弁≫

少年非行の情勢とその対応についてお答えします。

まず少年非行の情勢についてです。
県警察が検挙・補導した非行少年については、平成24年以降減少し続けており、令和元年が1,953人と、5年前の平成27年の3,942人と比べてもマイナス約50.5パーセントと半減しております。

こうした中、近年、特殊詐欺に加担して検挙した少年や薬物事犯で検挙した少年が増加していることが特徴の1つとして挙げられます。

特殊詐欺に加担して検挙した少年については、令和元年が48人と、平成27年の27人と比べて約77.8パーセント増加しております。また、薬物事犯で検挙した少年については、令和元年が87人と、平成27年の23人と比べて約278.3パーセント増加しております。

次に、このように増加している少年による特殊詐欺の加担や薬物乱用への取組についてお答えします。
特殊詐欺加担防止対策として、県警察では、「加担の防止」、「加担からの離脱」、「再加担の防止」という3つの観点から対策を推進しております。

対策の一例を申し上げますと、「加担の防止」のための取組として、県内の高校生の協力を得て啓発DVDを制作し、高校等に配付して活用を呼びかけております。

また、薬物乱用防止対策として、県警察では、学校と連携して児童・生徒に対する薬物乱用防止教室を実施しております。この教室では、大麻等の薬物が身体に及ぼす影響を説明するなどしております。

次に、少年相談・保護センターについてお答えします。県警察では、県内8か所に少年相談・保護センターを設け、警察官や専門の相談員が少年や保護者等からの非行問題や犯罪被害等に関する相談に応じております。

相談対応では、少年の特性の理解に努めながら、少年に対する指導・助言を行っているほか、保護者や学校関係者に対しても少年の特性に基づいた対応ができるよう助言を行うなど、家庭や学校等とも連携して対応しております。

県警察では、引き続き、少年非行の情勢を踏まえながら必要な対策を講じるとともに、警察による対応の中で非行問題を抱える少年やそれに悩む保護者を把握した場合には少年相談・保護センターの利用を働きかけるなど、その利用促進等を図り、少年の健全な育成を図ってまいります。

 

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